上記したように、気管支肺異形成症の多くは予定日より非常に早く生まれた、肺が未熟な早産児に起こります。慢性肺疾患の1つで、出生時に呼吸窮迫症候群などの重い肺疾患にかかっていた早産児、特に生後数週間以上にわたって人工呼吸器による治療を必要とした新生児に多くみられる病気です。
人工呼吸器によって肺胞が過度に引き伸ばされたり、高濃度酸素の毒性にさらされり、加えられた圧力によって肺や気管支の組織が損傷を受けてしまいます。すると肺は炎症を起こし、分泌物が増えて気管支が詰まり、肺胞がしぼんでしまう「無気肺」になってしまいます。
無気肺になってしまうと、周辺の肺胞は広がりすぎてしまい、肺内での空気の分布がバラバラになってしまいます。また、これらの刺激が加わることで肺胞の正常な発育が妨げてしまいます。
気管支肺異形成症の原因
気管支肺異形成症とは、肺が繰り返し損傷を受けたために起きる病気です。予定日より非常に早く生まれて人工呼吸器を必要とする早産児や、肺胞の発育が不十分であった早産児に起こります。
気管支肺異形成症とは
また、気管支肺異形成症は早産児だけでなく、予定通りに生まれた新生児が肺炎や喘息などの肺・気管支疾患にかかった場合に気管支肺異形成症を発症してしまうことがあります。
気管支肺異形成症の治療
症状と胸部X線検査、血液中の酸素濃度の結果を照らし合わせて診断します。
気管支肺異形成症の診断
気管支肺異形成症に陥ると、多呼吸となり、速く苦しそうに息をしたり、息を吸いこむ際に肋骨の間や胸骨の下がが引っこみます。
血液中の酸素濃度が下がるため、皮膚が青みがかった色になる(チアノーゼ)などの呼吸障害の症状が出ることもあります。症状が重い新生児では、肺の中に空気が溜まった状態となるため、胸が過剰にふくらんでいるように見えることがあります。胸部X線検査では、泡沫状陰影(ほうまつじょういんえい)、気腫状(きしゅじょう)陰影、索状(さくじょう)陰影などの所見が見られます。
気管支肺異形成症の症状
気管支肺異形成症の予防
軽症の場合は数週間から数カ月で酸素や薬剤を中止できます。重症の場合は退院後も在宅での酸素療法が必要になることもありますが、多くは1歳前までに治療を中止することができ、この病気にかかった赤ちゃんの大半は、死亡することはなく健やかに育ちます。
しかし、呼吸障害が改善した後も注意が必要となるので、しばらくはタバコの煙、室内暖房器具にさらされることがないようにし、気管支炎や肺炎、喘息を発症しないよう注意しましょう。
気管支肺異形成症の予後
栄養の補充・水分制限をし、呼吸障害に対して人工呼吸器による補助や酸素吸入が行われます。薬剤として、利尿薬、吸入気管支拡張薬、ビタミン剤、マクロライド系抗生剤などが使用されます。
呼吸器感染の場合は早期に診断を下し、治療を開始します。人工呼吸器や酸素補給をできるだけ早く止められるようにします。
肺の治療と体の発育のために栄養補給は120kcal/kg/日以上の摂取量を目安にし、肺うっ血やむくみが生じてしまう可能性があるため、1日の水分摂取量を約120mL/kgに制限します。
人工呼吸器による治療が長期化してしまいそうな場合には、抗炎症作用のあるステロイドホルモンを使用しますが、障害を受けた肺組織が治るには時間がかかるため、長期的な療養が必要となります。
生まれてくる赤ちゃんが気管支肺異形成症にならないようにするためには、早産・低出生体重を予防することが大切です。妊娠中は栄養のバランスを考え、ストレスを溜めない、喫煙やアルコールを避けるなどの体調管理をしっかり行いましょう。