分娩時骨折の検査
骨がへこむ陥没骨折の場合、そのほとんどが鉗子分娩(かんしぶんべん)によるものだと言われています。鉗子分娩とは、普通分娩で赤ちゃんが出てこられない時に、トングのような専用の器具を使って赤ちゃんの頭を挟み、引っ張り出す応急処置です。
頭を器具で挟むために、頭蓋骨骨折を起こしてしまうことがあり、圧力が強い場合には、骨折部の下に硬膜外出血を伴う場合も有ります。症状が重い場合脳挫傷を伴うこともあります。
分娩時骨折の原因
分娩時に赤ちゃんが産道を通るとき、体の一部がひっかかって骨折してしまう場合があります。鎖骨骨折、上腕骨骨折、大腿骨骨折、頭蓋骨骨折、脊椎骨折があり、頻度として高いとされているのは鎖骨骨折です。これらの骨折は比較的体の大きなあかちゃんや、骨盤位分娩での場合に起きやすいようです。骨折している部分をさわると激しく泣いたりその周辺がむくんでいたりします。
分娩時骨折とは
<症状>
手をあまり動かさない、触ると痛がって激しく泣くなどで気づかれます。触らなければ痛がりません。
<原因>
頭位分娩の際に、首が過剰に引き伸ばされるか、母親の恥骨結合に当たることで骨折すると考えられています。
分娩時骨折のなかではいちばん多くみられ、経腟(けいちつ)分娩のおよそ1〜2%に生じるといわれています。
鎖骨骨折
レントゲン:骨折の有無を調べます
CT:レントゲンではわからない骨折の有無や程度を調べます
MRI:骨折した周りの組織に損傷がないかを調べます
<治療>
固定や牽引などの治療で、骨折した手足の安静が必要になります。数週間で治り、通常は後遺症を残しません。
<症状>
頻度はあまり多くありません。骨折したほうの手足を動かさない、腫れがあることで気づかれます。
上腕骨骨折(じょうわんこつこっせつ)・大腿骨骨折(だいたいこつこっせつ)
<治療>
骨折後1週間ころから仮骨と言われる線維骨と軟骨からなる組織の形成が始まり、骨折部に硬い腫瘤が触れるようになります。そのあと骨がしっかりと形成され、腫瘤もなくなります。仮骨が始まるころになると痛みは伴わなくなります。固定する必要はなく、その他の特別な治療も必要ありません。通常は後遺症も残りません。
頭蓋骨骨折
比較的多い骨折で、全分娩の10〜20%に起こるといわれています。産道を通る際の圧力や、鉗子(かんし)分娩によって発生します。頭蓋骨にひびが入る線状骨折と、頭蓋骨の一部が陥没する陥没骨折がありますが、多くは線状骨折です。
ほとんどは鉗子分娩によって起こります。骨折部の下に硬膜外出血を伴うこともあります。
ほとんどはとくに症状がなく自然治癒するため、治療を必要としませんが、血腫を取り除く手術が必要になることがあります。
線状骨折
程度が強ければ脳挫傷を伴うことがあります。 陥没骨折の場合は、陰圧をかけて吸引するか、手術を行います。脳挫傷を伴う場合は、けいれん、呼吸が止まる、吐くなどの症状が出ることが多いので、呼吸循環管理、けいれんを止める、脳圧を抑えるなどの対症療法を必要とします。
陥没骨折
脊椎骨折
<症状>
損傷を受けた場所で異なりますが、多くは出生直後から呼吸障害を伴います。損傷した場所が胸髄の上部で、障害の程度が強ければ死産または出生直後に死亡します。程度が軽ければ生命の危険は少なく、足の弛緩性麻痺や排尿障害、排便障害が生じる場合があります。
<原因>
多くは骨盤分娩の際に頭部の娩出(べんしゅつ)が遅れ、強く引っ張られた時に起こります。この時には骨折だけでなく脊椎の脱臼も起こることがあり、同様に脊髄損傷の原因になることがあります。損傷としては裂傷、むくみ、うっ血、出血などがあります。
脊椎とは、いわゆる「背骨」です。そのなかに神経の束である脊髄が入っており、骨折によって脊髄が損傷を受けていないかどうかが重要になります。
<治療>
脊椎脱臼の場合は手術を行いますが、脊髄を損傷している場合、修復することはできません。呼吸障害、排尿・排便の補助などの対症療法になります。横隔膜神経麻痺では人工呼吸器が必要なこともあります。