胎便吸引症候群の症状
普通は羊水内にいる赤ちゃんが胎便を排泄することはありません。子宮内でおしっこをしますが、排泄は出生後、授乳を開始してから始まります。しかし、何らかの理由で羊水中の酸素が欠乏してしまうと、赤ちゃんが低酸素状態になり、そのストレスで腸が活発に動いて胎便を排泄してしまいます。排泄した胎便により羊水が濁り、低酸素状態のストレスで激しくあえいでしまうために、羊水と一緒に胎便を吸い込んでしまうのです。
胎便吸引症候群の原因
胎便吸引症候群(MAS:Meconium aspiration syndrome)とは、胎児期や出生直後の赤ちゃんが呼吸障害を起こす病気です。赤ちゃんはお母さんのお腹の中で羊水に囲まれていますが、まれに羊水の中で胎便を排泄してしまい、それを自分で吸い込んで肺や気道に胎便が詰まることがあります。場合によっては肺炎を起こしたり、肺が破裂したり、気道がつまって呼吸困難を起こすことがあります。赤ちゃんによって重症度が異なるので、回復までの時間はさまざまです。羊水への胎便排泄は出産の10~15%の割合でみられ、そのうちの約5%で胎便吸引症候群を発症するといわれています。
胎便吸引症候群って?
生まれたときに赤ちゃんが胎便で覆われ、ぐったりしていたり、呼吸をしていない場合には、すぐに赤ちゃんの口や鼻、のどから胎便を取り除きます。その後、肺につながる気管へチューブを通し、気管内の胎便もすべて取り除きます。肺に吸い込まれた胎便は、呼吸困難を引き起こすだけでなく、肺炎や感染症のリスクにつながるため、取り除いた後には抗生物質を投与するのが一般的です。ほとんどの場合が症状は軽く、酸素吸入を行い、必要であれば人工呼吸器を使用し、1週間ほど経過を観察していれば、自分で呼吸ができるようになるので後遺症などを心配する必要はありません。
もしも胎便吸引症候群により仮死状態で産まれてきた場合は、産声を上げる前に胎便の除去を行います。
気管内にチューブを入れ酸素を送り、肺を拡張させる物質を使って肺の中を洗い、胎便を除きます。肺の感染を予防できれば、2~3日で呼吸も良くなります。
ただし、病気が重く、肺が空気を取り込めなくなる気胸や、持続性肺高血圧症などの合併症を発症してしまうと命に関わる恐れがあるので、注意が必要です。
胎便吸引症候群の治療
胎便吸引症候群はレントゲンで診断します。
肺に胎便が詰まっていると、肺に炎症像が写ります。
斑状(まだらじょう)に写っていたり、肺に胎便が詰まっている部分だけ透明に抜けているため、判明します。
胎便吸引症候群の診断
胎便吸引症候群を発症している赤ちゃんは、出生直後から呼吸が速く、息を吸うときに胸壁の下部がへこみ、息を吐くときにうめくような声を出すといった呼吸障害に陥ります。また、皮膚や爪、臍帯が胎便の影響で黄色く着色していたり、呼吸困難で皮膚が青紫色になっていたり(チアノーゼ)していれば、胎便吸引症候群が疑われます。
羊水内の酸素が欠乏する明確な原因が分かっていないため、残念ながら胎便吸引症候群の予防法はありません。しかし、胎盤機能不全症候群によって羊水内の酸素が欠乏する恐れがあるので、胎盤機能不全症候群の原因の一つである妊娠中毒症妊娠高血圧症候群)にならないよう、塩分を控えたバランスのよい食事を心がけましょう。妊娠中の塩分は、1日10g以下が目安です。
万が一、赤ちゃんが胎便吸引症候群を発症して生まれてきたとしても、出生後すぐに適切な処置を受けることができますし、発症した赤ちゃんのほとんどが完治し、予後の状態も良好です。あまり心配しすぎずに出産に臨んでくださいね。