2016.04.05 Tue 更新

「トキソプラズマ症」ってどんな病気?原因と症状、治療法について

「トキソプラズマ」という寄生虫を知っていますか?猫との接触や生肉を食べる事で感染すると言われていますが、妊娠中にトキソプラズマに感染することでお母さんやおなかの中の赤ちゃんにどのような影響があるのでしょうか?その原因と症状、治療法についてまとめてご紹介いたします。

赤ちゃんへの影響

トキソプラズマは、感染後5日から数週間の潜伏期間を経て発症します。
感染経路は、ほとんどが人間の口から消化管を経て体内に入り込み、細胞内で増殖します。
豚・ヤギ・ネズミ・ニワトリなど200種類以上もの哺乳類・鳥類を中間宿主にしていますが、それらの動物から人間に感染することはありません。
トキソプラズマは猫科の動物を最終的に寄生して繁殖する終宿主にするため、猫から人間に感染する可能性があるのです。

生肉や生ハム、サラミなどのお肉をよく食べるなどの食生活が関係しているといわれています。
トキソプラズマに感染しても、大人であれば、ほとんどの人は免疫が働いてほとんど症状は出ません。
健康な成人であれば症状が出ることはまれで、発症しても軽い風邪程度の症状が現れるだけです。
感染した1~2割でリンパ節の腫れや筋肉痛、発熱、だるさなどの症状が現れることもあります。
しかしそのほとんどは重篤な症状になることはないので安心してください。
一度感染してしまえば免疫ができて2度感染することはなく、それほど危険性は高くない感染症です。

正式名は「トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)」といい、多くの動物や鳥が持っている寄生虫の一種です。
動物(特に猫)の体内や排泄物、土の中などにいることがあり、人にも感染します。
世界中の人口の3分の1以上にあたる数十億人がトキソプラズマに感染しているといわれます。
日本の場合、妊婦健診の検査で陽性に出る人は10%程度。約90%の人は陰性です。
欧米での陽性率は高く、とくにフランスの場合は約80%と言われています。

トキソプラズマとは?

妊娠中期

胎児への感染率は低いが感染した場合、症状が出る可能性は高く、また重篤化する可能性も高いです。

妊娠初期

大人には大して問題がありませんが、問題は母体から胎児に感染した場合です。
妊娠中にトキソプラズマに初感染した場合に胎児に感染する恐れがあります。
胎児へ感染した場合、重篤化すると胎児は頭の中に髄液が溜まる水頭症(すいとうしょう)や網脈絡膜炎、頭蓋内石灰化、脳室拡大、精神運動障害、肝腫大などを生じる場合があるだけでなく、流産や死産になる可能性も出てきます。

感染率や重篤化率は妊娠の時期によっても異なります。

注意すべきは…

症状としては、色素性の脈絡網膜炎、ひきつけや精神運動発達の遅延です。
頭蓋の肥大などがみられますが、多くの場合はこのような症状は出ず何も起こりませんが、時に慢性感染となり、数年後に眼に病変が見つかる場合もあるそうです。

胎児への感染率は70%程度に達しますが、症状は軽くなりやすく気づかれないことも多い。

妊娠後期

4か月以降の感染では、内臓や特に消化器官に影響が出やすく、黄疸や脾臓や肝臓の肥大化、粘膜からの出血が見られ、予後不良となることもある。

注意すべきは、妊娠時期に初感染した場合です。(過去に感染していた場合は胎児に感染することはありません)
日本では、胎児に症状が現れて重篤化することはまれなケースなのですが、重篤化してしまった場合に、大変なことになりますので、感染のもととなるような行為、生肉や土いじり、猫のトイレ掃除などは避けた方が良いでしょう。

妊娠中・妊娠直前はトキソプラズマの抗体検査をすべき?

妊娠中なら妊婦検診の際にトキソプラズマ抗体の有無を検査できますし、妊娠前でも婦人科で検査が受けられますよ。
血液検査をすれば、トキソプラズマへの抗体があるかどうかがわかります。費用も1,000円前後で手軽に受けられますよ。
抗体があれば妊娠中の感染は特に心配する必要はありませんし、抗体がなかった場合は念のため生肉を食べない、猫との接触を避けるといった対処をして置けば問題ありません。

トキソプラズマに一度感染していれば、体の中に抗体ができているので、感染におびえる必要はありません。
妊娠から6ヶ月以上前までに感染していれば、胎児への影響はありませんので安心してください。
妊娠中の方や妊娠を望む方は、一度トキソプラズマの抗体検査を受けるようにしましょう。

治療法

トキソプラズマに対する正しい知識が身につければ、必要以上に感染を恐れる必要はありません。
特に妊娠中に猫との接触を怖がったり、肉を食べること自体に不安を感じたりするのはストレスになってしまって、かえって体に良くありません。どんな病気なのかをきちんと理解して、穏やかな毎日を楽しんでくださいね。

トキソプラズマの感染ルートは経口感染のみで、空気感染・経皮感染することはありません。
そのため、猫との接触や生肉の摂取をしていなければ感染することはほとんどありませんよ。
また、トキソプラズマに感染する場合、直接猫からというよりも庭や畑の土、ハエやゴキブリなどの害虫を経由して猫の糞に接してしまうことが問題です。
ですが、それも台所などの殺菌や外から帰った後の手洗いうがいを徹底すれば感染を防ぐことができます。

感染予防法は?

感染しても、症状が現れていなければ治療の必要はありません。
しかし、妊娠していない方でもトキソプラズマ症の症状が現れていれば、スルファジアジンなどの抗生物質の投薬治療を行います。
また、妊婦の感染がわかった場合には、胎児への感染を防ぐために、スピラマイシンという抗生物質が使用されます。

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