2016.04.13 Wed 更新

HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス-1型) って?妊娠中のこの病気の原因と症状、治療法について

妊婦健診の際の血液検査に、HTLV-1というウイルスについての項目があります。 検査するようになったのはつい最近、平成21年からですが、ご存知ないという方は大勢います。 今回は「HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス-1型)について」ご紹介します。 TLV−1とはどんな病気を引き起こすウイルスで、妊婦さんやお腹の赤ちゃんにどんな影響を及ぼすのか、治療法について知っていきましょう!

HTLV-1に感染して抗体を保有している人を「キャリア」といいます。
「キャリア」とは感染していても発病しない人のことです。
HTLV-1のキャリアの95%以上の人は自覚症状がありません。
自覚症状がないので、生涯病気になることはありません。
自分がキャリアだということを知らない、という人もいるくらいです。
キャリアで発病する確率は4〜5%です。
平均発症年齢は60歳だといわれています。

「キャリア」

現在、日本では約108万人の感染者がいると言われています。
非常に多い感染症の1つです。

妊娠中の定期健診の際に行われる血液検査では、このHTLV-Ⅰの抗体があるかどうかを調べます。
抗体があれば、「感染」していることになります。

正式名称は「ヒトT細胞白血病ウイルス-1型」といいます。
このウイルスは、血液中の白血球のひとつであるリンパ球に感染します。
リンパ球に感染した後、身体の中でこのウイルスに抗体が作られます。
普通は、作られた抗体の働きで体の中からウイルスを取り除くことができます。
ですが、HTLV-1は、侵入したTリンパ球の中でさらに遺伝子の中にまで入り込んでしまうため、作られた抗体では取り除くことができなくなります。
HTLV-1は侵入したTリンパ球の遺伝子の中で生き続ける「持続感染」のウイルスなんです。

HTLV-1とはどんなウイルスなの?

潜伏期間はとても長いです。
30年~70年と長期にわたって体内に潜伏します。
ですので、自分がHTLV-1に感染したということに気付かないで一生を終える人も多くいます。

HTLV-1の症状

発症していないから大丈夫!と思っていても、HTLV-1は母乳、性交渉、輸血によって感染する可能性があります。
キャリアの人は十分注意が必要です。

HTLV-1に感染したTリンパ球が脊髄の中に入り込んで、炎症を引き起こす病気です。
慢性進行性の両下肢麻痺、排尿排便障害を起こします。
この病気は難病に指定されています。

合併症2「HAM(HTLV-1関連脊髄症)」

白血病・リンパ腫の一種で、血液のがんです。
発症すると強い免疫不全になります。
そして、通常であればかかりにくい感染症にもかかりやすくなります。
ATLが進行するといろんな臓器に障害を起こし、そのまま放置すれば死に至ります。

合併症1「ATL(成人T細胞白血病)」

症状はリンパ節の腫れ、肝臓、脾臓の腫れ原因不明の皮疹、のどの渇き、意識障害、不整脈などです。
症状が悪化すると、「日和見感染」というで免疫力が低下した時にかかる病気を発症します。

合併症3「HU(HTLV-1関連ぶどう膜炎)」

HTLV-1は感染病です。
主な感染経路は以下の3つだといわれています。

HTLV-1の原因

HTLV-1の感染が原因で、目の中のぶどう膜という組織に炎症が起きる病気です。
発症すると目の前にゴミや虫が飛んでいるように見えたり、かすんで見えたりするようになります。
HU特有の症状がないので発見までに時間がかかる場合があります。

現在特定されている感染経路で最も多いとされています。
妊娠ママさんが保有しているウイルスの量によるので個人差があります。
出産のときに感染するというよりは、「母乳」を介して感染するようです。
HTLV-1のキャリアの方は母乳ではなく、人口ミルクで対応されます。

母子感染

性感染

HTLV-1の治療法

献血者のチェック検査が開始されてからは輸血による感染はほぼ無くなりました。
ですが、献血者のチェック検査を行われる前には、輸血による感染も多かったみたいです。

輸血感染

精液内のヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型が原因で男性から女性への感染経路のみとされています。
ですので、性行為を行う際、コンドームの使用が予防法として有効です。

HTLV-1の予防法

HTLV-1に感染してしまい、発症してしまったら、抗がん剤を使った化学療法や骨髄移植による治療を行います。
HTLV-1は、ただの感染症ではなく、遺伝子への感染です。
完治はとても難しいのです。

感染が発覚した場合は、発症していない限り、今まで通りの生活で大丈夫です。
ただ、誰かに感染させることを避けるため、予防はしっかりしましょう。
HTLV-1に感染したリンパ球は、乾燥や熱、洗剤で簡単に死滅します。
ですので、日常生活において感染することはありません。

握手したり食器を共有したり、お風呂やプールに入ることによっても感染する可能性はほぼありません。
風邪やインフルエンザのように、くしゃみや咳、唾液での飛沫感染もありません。
ですが、血液が付着した歯ブラシやカミソリなどの共有、消毒処理がしっかり行われていない医療機器を使用は感染の可能性が非常に高いです。

子供をもつことを希望している場合

まずはパートナーと十分に話し合いお互いの意思を確認してください。
HTLV-1に感染していても妊娠に影響することはありません。
HTLV-1が原因で赤ちゃんに奇形が生じたり、産まれた後に異常を起こすこともありませんので、安心してくださいね。

赤ちゃんへの影響は?

妊娠に影響の出ることはほぼありません。
胎児に奇形が生じる事や出産後の赤ちゃんに異常が生じるということもありません。

母乳の中にHTLV-1に感染した細胞が含まれているため、母乳による感染が主な感染ルートです。
母親がHTLV-1に感染している場合、生後4ヶ月以上母乳を与え続けると約20%の乳児がHTLV-1に感染するとされています。
しかし、母乳を全く与えない場合でも約3%の感染が確認されており、完全に感染を防ぐことはできません。

以上を踏まえた上で、母乳育児に関しては以下のようにさまざまな選択肢があります。

1.育児用ミルクを与える、
2.3ヶ月以内の短期間に限って母乳を与える
3.冷凍した母乳を与える

といった3つの方法が有効とされています。
3の冷凍する場合は、母乳を24時間以上冷凍することでウイルスに感染した細胞を壊し感染力をなくすことが出来ると言われています。
産科や小児科の医師と一緒に、赤ちゃんにとって最適な栄養方法を考え、対策しましょう。

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