・外傷性の頭蓋内出血
難産でなかなか産道が通れない場合には、外から力が加わり、脳の表面に近い硬膜下、硬膜外、脳実質に出血が起きることが多くあります。
新生児の脳は血流が豊富であり、血管も未熟です。血液凝固機能も成熟していないので、成人に比べると頭蓋内出血が起こりやす状態になっています。
新生児の頭蓋内出血の原因として、分娩時に外から加わった力によって起こる外傷性のものと、仮死状態で生まれた際の血液中の酸素不足による低酸素性のものと2通りがあります。
新生児の頭蓋内出血の原因
頭蓋骨の中で発生する出血のすべてを総称して頭蓋内出血といいます。出血が起こる部位によって、硬膜外出血、硬膜下出血、くも膜下出血、脳室内出血などに分けられます。通常の頭蓋内出血は、頭部に強い衝撃が加わることで起こったり、スポーツ中に起こることが多いのですが、新生児の頭蓋内出血の場合は異なります。
頭蓋内出血とは
出血の種類と程度により異なりますが、軽度の出血では症状への対症療法だけですみ、正常な発達が期待できます。出血多量のショックに対しては輸血や輸液などの全身管理が必要になり、頭蓋内の脳圧を下げるほか、脳への圧迫をとるために血腫(けっしゅ)除去手術が必要となることもあります。出血後に髄液(ずいえき)がたまって脳室が拡大する場合は、髄液を排出するためシャント(髄液還流)術が行なわれます。
新生児の頭蓋内出血の治療
新生児の頭蓋内出血は、軽度の場合は一時的なものであったり、無症状であることもあります。
出血量が多い場合には、失血による重度の貧血症状、血圧低下やショック状態を発症します。また、出血によって脳が圧迫されてしまうと、頭蓋内の脳圧が上がり、全身が青白くなる、呼吸停止、甲高い泣き声、けいれんなどが認められます。
特に脳室内出血やくも膜下出血の場合は、大泉門(赤ちゃんの頭にある、柔らかくて少しへこんでいる部分)に脳脊髄液が溜まり、「水頭症」を発症することもあります。その場合には、頭囲が大きくなる、ミルクを飲まない、嘔吐、呼吸が止まるなどの症状があらわれます。
新生児の頭蓋内出血の症状
・低酸素性の頭蓋内出血
未熟児の場合、出産のときに脳が低酸素状態になると、脳室内、上衣下に出血が起きることが多いようです。
脳の形成が未熟な34週未満の未熟児や、先天的に血液凝固機能の障害がある新生児の場合には、より出血が起こりやすくなります。
どの場所の出血でも、症状がほとんど現れないような軽症であれば心配は要りません。
しかし、症状が強いほど後遺症が残りやすくなります。脳性麻痺や知的障害、てんかんなどの中枢神経系の後遺症が考えられますが、その程度もさまざまです。
新生児の頭蓋内出血の予後
どの場所の出血であっても、症状がなければ経過観察し、自然に吸収されるのを待ちます。症状を伴う場合、硬膜外出血、硬膜下出血と一部の脳実質内出血では血腫を取り除く手術が行われることがあります。脳室内出血、上衣下出血では手術は行わず、けいれんの治療、頭蓋内圧が上昇するのを防ぐ、呼吸循環の安定などの対症療法を行います。 くも膜下出血も通常は予後がよいために、手術は行わずに対症療法を行います。出血後に水頭症が起こってきた場合は、シャント術などの脳外科的な治療が必要になることがあります。