この他にも、幼児期以上になってから、
●便が出にくく便秘になりやすい
●便が細い
などの症状から異常に気づく場合があります。
鎖肛によって生じる症状は以下の通りです。
●体温を測る際、直腸に体温計が入らない
●授乳中にお腹が極端に張る
●胆汁の混ざった嘔吐をする
●尿に胎便やガスが混じる(尿道に瘻孔がある場合)
●膣から胎便が出る(膣に瘻孔がある場合)
●子宮や膣に尿が溜まって腫れる
鎖肛の症状の現れ方
鎖肛とは、直腸肛門奇形のことを言います。肛門は食べたものが消化され、腸を通って外に出される最後の部分で、便を外に出すという大切な役割を担っています。 鎖肛とは、この肛門が胎児の段階でうまく作られなかったために起こる病気で、おしりに肛門が開いてなかったり、他の臓器につながってしまう小さな穴(瘻孔)がみられる状態だったり、肛門の位置がずれているものまで様々な場合があります。
約5,000人に一人くらいの割合で発症し、消化管の先天的異常の中で最も多いと言われています。そのため、医師や助産師は出生直後に赤ちゃんのおしりを必ず調べ、鎖肛の状態であればすぐに外科的な処置を依頼します。
鎖肛ってどんな病気?
視診により確認します。
男の子の場合は、陰嚢(いんのう)から本来肛門があるべきところまでを、女の子の場合は、膣の後ろの部分から本来肛門があるべきところまでを確認します。
会陰部に出口、瘻孔のない赤ちゃんの場合にはX線検査を行います。赤ちゃんを逆立ちした状態にして、腸に溜まったガスを直腸の端に集めて検査します。その映像で、「高位」・「中位」・「低位」のどのタイプなのかを診断します。
鎖肛の診断
原因ははっきりとはわかっていませんが、胎生初期の発育過程で何らかの異常が発生し、鎖肛が起こるのではと考えられています。妊娠2ヶ月頃まで、胎児の直腸や肛門はそれぞれ分離した状態で成長していきます。その後成長して直腸や肛門、膀胱などの泌尿器系が繋がる際に、異常が起きて鎖肛になるとされており、女の子であれば直腸と泌尿器系の間にある膣や子宮が、男の子であれば膀胱や泌尿器系と直腸が繋がってしまいます。出生前に発見することは難しく、超音波検査で胎児の状態を調べますが、鎖肛の有無は生まれるまで分かりません。
鎖肛の原因
鎖肛の予後
直腸の末端と肛門皮膚がごく近い「低位」の場合は、腸をおしりまで下ろして肛門に穴を開ける処置が可能です。皮膚より遠く離れているものはその程度の差や瘻孔の有無によって「高位」や「中位」に分類されますが、この二つに分類された場合は、いったん腸の一部をおなかの外に出し、排便のための人工肛門をつくる処置を行います。赤ちゃんがある程度発育するのを待ち、直腸や肛門の機能を担う筋肉が発達してから,改めて腸と肛門をつないで人工肛門を閉じる手術を行います。
出生後は赤ちゃんの胃の中に管を留置し、授乳を禁じて輸液を行います。
治療は手術療法で、処置は鎖肛の状態によって異なります。消化管がどこまで下りてきているか、また、直腸の末端が本来肛門の開くべき場所とどれほど離れているかによって「高位」「中位」「低位」の3つのグループに分類されます。
鎖肛の治療
低位型の鎖肛であれば、術後の排便機能はほぼ全例良好ですが,中間位型や高位型では重度の便秘や便失禁などの排便障害が残ってしまう場合があります。
その場合、排便機能が確立するまでは、以下の訓練を必要とします。
時間はかかるかもしれませんが、きっと普通に排便ができるようになるので、焦らずに見守ってあげましょう。
●手術でつくった肛門から便が出るようになったら、1日1回浣腸をして、まとまった量の便が1回で出るようにします。
●手術で作った肛門は小さくなりやすい為、それを防ぐ為にブジーを行います。
●2歳くらいになったら、排便を促すため、毎朝食後30分トイレでいきむトレーニングをします。いきめず便が出ないときは、浣腸や坐薬で便を出すきっかけをつくるようにしてあげます。