2016.06.08 Wed 更新

赤ちゃんの遺伝性球状赤血球症ってどんな病気?その原因と治療法について

遺伝性球状赤血球症とは、白玉団子のような形をしているはずの赤血球が球状に変化してしまい、赤血球が壊されてしまう病気です。赤血球が壊されてしまうことで、ひどい貧血に陥ってしまいます。合併症を引き起こしたり、感染によって症状が重篤化してしまう恐れがあるので、注意が必要です。

遺伝性球状赤血球症の原因

主な症状は、貧血、黄疸、腹部や背中に痛みを感じる、膨満感を伴う脾臓の腫れです。溶血でビリルビンが破壊されるため、黄疸は小児の約半数に見られます。過剰なビリルビンは、胆石を引き起こす場合もあります。貧血は、成長して6歳を超えると、骨髄で生産する赤血球の量が増えるために症状が見られなくなる場合があります。しかし、気をつけなければならないのは、伝染性であるリンゴ病の原因、「ヒトパルボウイルスB19」に感染すると重症な貧血を発症してしまうので、リンゴ病が流行している時期には注意が必要です。また、風邪のウイルスにより脾臓の機能が促進され、溶血が盛んになってしまうこともあるので、健康管理を怠らないことが大切です。

遺伝性球状赤血球症の症状

遺伝性球状赤血球症は、正常な状態では円板状に保っている赤血球が、赤血球を覆う細胞膜を作るたんぱく質であるスペクトリンに異常が起こり球状に変形してしまう病気です。変形することにより、赤血球の本来の機能が低下してしまい、赤血球が壊される溶血という状態になる病気です。日本で発見される先天性溶血性貧血の中でも、最も発症率の高い疾患で、5~10万人に一人の割合で発病すると言われています。ほとんどが遺伝
性ですが、約30%は突然変異によって起こっています。
特に遺伝を多く原因とするため遺伝性と言われますが、この疾患の3割ほどは遺伝ではない孤発性のものであると言われています。

遺伝性球状赤血球症とは

遺伝性球状赤血球症の治療で一番効果的なのは、脾臓の摘出だと言われています。以前までは脾臓を摘出することで、風邪をひきやすくなったり、肺炎球菌などの重症細菌感染症が心配されるため幼少期は摘出しないとしていましたが、最近では予防接種を受けることで、重症な症例の場合には3歳以前でも摘脾できるようになってきました。傷が小さく済む腹空鏡下手術も可能となり、むしろ摘出した方が良いのではないかと提唱するドクターもいます。軽症の場合は青年期まで待機可能なので、成長を待ち、肺炎球菌ワクチン接種と術後のペニシリン予防内服を受けて摘脾します。

遺伝性球状赤血球症の治療

正球性正色素性貧血、赤血球の形態観察で球状赤血球、網状赤血球の増加、黄疸(間接ビリルビン値の上昇)、脾臓の腫れ、赤血球の浸透圧抵抗の低下などを総合して診断します。可能であれば、膜蛋白の異常についても検査します。 ただし、新生児期には赤血球の形態、浸透圧抵抗ともに所見が見られないことも多いため、診断が難しいことがあります。

遺伝性球状赤血球症の診断

赤血球膜を形成する物質の遺伝的異常(スペクトリン、アンキリン、Band 3, Protein 4.2の欠損)が原因であると言われています。細胞骨格に異常があるために浸透圧に抵抗する力が弱くなり、赤血球内に侵入したナトリウムイオンが膨張し、円盤状であるはずの赤血球が丸い形に変化します。
球膜の蛋白質は赤血球の形態維持や変形機能に重要な役割を担っているため、赤血球が壊れやすくなります。

摘脾を受けていない重症例、中等症では骨髄での赤血球造血が盛んなので、葉酸が欠乏しないように緑黄色野菜を多くとるなど、食事に気をつけましょう。また、胆石も重要な合併症なので、定期的に超音波検査を受けることも大切です。

遺伝性球状赤血球症の予後

摘脾の他にも、黄疸への光線療法や交換輸血などが行われます。
新生児の重症貧血や、感染病による溶血の悪化の場合、赤血球や白血球・血小板などが著しく減少する「無形成発作」があらわれた時に赤血球輸血を行います。

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